順序を逆にして決める
多くの人は「いくら分買うか」から決め、損切りはあとで考えます。リスク管理でよく使われる順序はその逆です。まず今回の取引で失ってもよい金額を決め、次にチャートで「ここまで来たら判断が間違っていた」とみなす損切りの位置を決め、最後にその2つから数量を計算します。こうすれば、損切り幅が広くても狭くても、損切りになったときに失う金額はあらかじめ決めた値と同じになります。
- ① 1回で失ってもよい金額
- ② 損切りの位置(チャートの構造やボラティリティで)
- ③ 数量 = ① ÷(エントリー価格 − 損切り価格)
計算例:残高100万円
残高が100万円で、1回に残高の1%まで失うと決めたなら、許容する損失は1万円です。1%はよく挙げられる例にすぎず、勧める比率ではありません。図のように100円でエントリーして95円で損切りするなら、1個あたりのリスクは5円なので、数量は1万 ÷ 5 = 2,000個、ポジションの金額は20万円です。損切りを90円に置くなら、1個あたりのリスクが10円なので数量は1,000個、ポジションは10万円に減ります。損切りが遠いほどポジションが小さくなる仕組みです。
例: エントリー100、損切りはこの区間で最も低い安値(96.2)の下の95です。1単位あたりのリスク(1R)は5で、目標の105は +1R、110は +2R です。数量は、許容する損失額を5で割って決めます。
損切りの位置:構造かボラティリティか
損切りの位置を決める方法は、大きく2つです。1つは構造で、上昇を見込んだエントリーなら、直前のスイング安値の下のように、その価格を割れば見込みの根拠がなくなる位置に置きます。もう1つはボラティリティで、エントリー価格から ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ、足1本がふだん動く幅)の何倍か離れた所に置きます。ふだんの揺れより狭く置くと、意味のない揺れにもかかりやすくなります。ATR の2〜3倍を使う例がよく見られますが、これも例であり、詳しくは ATR の記事にあります。ATR で作ったスーパートレンドの線に沿って損切りを引き上げていく方法も、同じ考え方です。
R倍数:損益をリスク単位で書く
R は、1回の取引で最初に決めたリスク金額を1とした単位です。上の例では 1R は1万円(価格では5円)なので、105円で売れば +1R、110円で売れば +2R、損切りになれば −1R です。結果を R で記録しておけば、金額の違う取引どうしを比べられ、ルール全体の期待値も数えられます。たとえば勝率40%で、勝つときの平均が +2R、負けるときが −1R なら、1取引あたりの期待値は 0.4 × 2 − 0.6 × 1 = +0.2R です。ただし、目標を遠くに置くほど届く割合が下がるように、勝率と損益比は互いに絡み合っているので、片方だけ変えて計算すると間違えます。
レバレッジは損失額を変えない
同じ数量を同じ損切り価格で決済すれば、損失額はレバレッジに関係なく同じです。20万円分のポジションを2倍で持てば証拠金は10万円、10倍なら2万円が必要になるだけで、95円で損切りになれば、どちらも1万円を失います。レバレッジが変えるのは、必要な証拠金と清算価格までの距離です。分離マージンのロングの清算価格はおおよそ エントリー価格 ×(1 − 1/レバレッジ + 維持証拠金率)なので、維持証拠金率0.4%の区分で25倍なら、エントリー価格より約3.6%下です。5%下に置いた損切りより先に清算が来ます。先物の清算価格計算機で、どちらが先に届くかを確かめられます。
連敗の算数
勝率が50%でも、損失は均等に混ざって来るわけではありません。取引をコイントスに単純化して計算すると、10回のうち5回以上続けて負ける確率は約11%、100回のうちなら約81%です。長く取引すれば、5連敗のような連続した損失を一度は経験する可能性が高いということです。このとき、1回に賭けるリスクの大きさが差を生みます。毎回残高の一定の割合を失いながら10回続けて負けると、残る残高は下のとおりです。約60%から元に戻るには約67%、約35%からは約187%を稼がなければなりません。
- 1%ずつ:約90.4%
- 2%ずつ:約81.7%
- 5%ずつ:約59.9%
- 10%ずつ:約34.9%
実際の損失は計画より大きくなることがある
計算した損失は、損切り価格ちょうどで約定するという仮定の上に成り立っています。実際にはエントリーと決済の手数料が加わり、価格が急に動くと、損切り注文が損切り価格より不利に約定するスリッページが生じます。暗号資産は24時間取引されますが、大量の清算が集中するときは短い時間で板が薄くなり、大きく滑ることがあります。そのため許容する損失を決めるとき、こうした差を余裕として残しておくやり方が使われます。バックテストでも同じコストを入れてはじめて、計画と結果が合います(バックテストの記事を参照)。
この記事が言っていないこと
この記事は、失う金額が決まったときに数量を計算する方法であって、いくら賭けるべきかについての助言ではありません。1%、ATR の2〜3倍、+2R といった数字は、計算を示すために挙げた例です。適切な大きさは、そのお金が生活に必要なお金かどうか、損失にどれだけ耐えられるかによって人それぞれです。レバレッジと清算が損失をどう大きくするかは、暗号資産のテーマにある「借りたお金で取引するときに起きること」の記事に別にまとめました。
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